定期借地権は「一定期間が過ぎると借地権が消滅するものです。
従来の普通借地権のように、法定更新がなく、立退料とか建物買い取り請求権にもとずく費用もかかりません。(建物譲渡特約付き借地権の場合は、貸し手側が建物の譲渡を受ける特約を結ぶ)
定期借地権には「一般定期借地権」「建物譲渡特約付き借地権」「事務用借地権」の三タイプがあり「必ず返還されること」は共通していますが、権利の内容が異なりますので、それぞれの効力を充分に発揮するような契約を結ぶ必要があります。
何と言ってもはじめての制度であり、契約には個人的な事情もからんでくるでしょうから、契約にあたっては定期借地権に手慣れた弁護士、税理士、信託銀行、不動産会社、住宅会社など専門家のアドバイスを求め、間違いのないようにすすめたいものです。
このページでは、定期借地権の契約のさいにポイントとなるものを中心にガイドします。
契約にあたっては、事業用借地権は公正証書、一般定期借地権は公正証書等の書面、建物譲渡特約付き借地権は特に定めがないので口頭契約でもかまわないことになっています。
しかし、実務上は、すべて公正証書による契約にする必要があるでしょう。通常の書面契約では、将来、契約書の紛失によるトラブルのおそれがあるからです。
公正証書による契約は、公証人役場へ出向いて、公証人にもとづく公正証書を作成してもらうことになります。その際に地代によって1~3万円程度の作成手数料がかかります。
これまで普通借地権では地上権を除いてほとんど登記する例はみられませんでした。借りる側も建てた建物を登記しておけば対抗力があるので問題もなかったわけです。
しかし、今後、定期借地権については(義務はありませんが)登記したほうがよいでしょう。
*一般定期借地権と事務用借地権・・・登記簿の乙区欄に定期借地権の存続期間や特約などを記載
*建物譲渡特約付き借地権・・・将来の建物買い取りの所有権移転登記の順位を保全するため、売買予約にもとづく所有権移転の仮登記
登記が必要となるのは、何十年後かになったときに普通借地権との混同を避けるためです。また、公正証書を作成しておいたとしても、保存期間は20年なので登記しておいたほうが安心です。
一般定期借地権、建物譲渡特約付き借地権、事務用借地権のいずれかを明示することは当然として、法で認められている特約、借りる人が建てる建物等の用途、構造、借地期間などをはっきりさせる必要があります。
(1)一般定期借地権
「期間満了時に契約の更新をしない」「建物を再築しても期間は延長しない」「借地人は建物の買い取り請求権を行使しない」の三つの特約によって、契約満了と同時に借地権が消滅します。
「原状回復義務・・・更地での返還」については、ケースにより、宅地造成や建物は現況のまま返してもらう特約でもよいでしょう。借地人からの買い取り請求は排除されても、土地オーナーが有償または無償で譲り受けることは何ら差しつかえありません。
(2)建物譲渡特約付き借地権
「契約後30年以上経過した日に土地オーナーが借地人から建物の譲渡を受け、それによって借地権が消滅する」との特約をします。
譲り受けるときの価格についても「双方が協議して定める」「協議が整わないときには双方から選任された不動産鑑定士の評価による」と明示しておく必要があるでしょう。
(3)事務用借地権
「契約を更新しない」「建物再築による期間延長をしない」「借地人には建物・施設等の買い取り請求権がない」を特約。用途については「居住用建物の禁止」を入れる必要があります。
権利金には法律上の定めがありませんが、一般的には「返還しないもの」といえますので金額とあわせてその旨を明示しておく必要があります。
保証金とか敷金は借地人の更地返還や債務不履行などを担保するもので、いずれ契約終了時に返還する性格があります。
そこで、これらをはっきりさせるとともに金額、利息を付けない、保証金などから差し引く金額の内訳なども条文に入れる必要があります。
更地返還を確実なものにするため、契約終了の何年か前から取りこわし積立金を求める旨の条文も有効です。
地代と支払日、支払い方法、将来の改定方法をはっきりさせる必要があります。
地代の改定・・・値上げは、とかくトラブルのもとになりますので、その方法には十分考慮したいものです。
改定方法で社会的なコンセンサスの得られているものはありませんが、当初決めた地代のうち、固定資産税・都市計画税・管理費などの保有コスト分とオーナーの手取り収入となる純地代を分け、固定資産税等はその増減を反映させ、純地代には一般物価をスライドさせるといった内容にするのも一法です。
借地人にとっても、ある程度将来の見通しが立てられますし、合理的な説明が出来るのではないでしょうか。
なお、借地人は改定の根拠の合理性の有無とか周辺の相場ともにらみあわせて納得するということも忘れてはなりません。
借地人が建物等を譲渡したり、転貸することが考えられます。この場合借り手とのトラブルを防ぐためにも書面による承諾を求める必要があります。承諾料については普通借地権のような金額はむずかしいでしょう。将来、確実に戻るわけですからゼロもしくは少額なものになるのではないかと考えられます。
普通借地権のような「増改築禁止特約」はいらないのではなかと思われます。借り手の自由を認め、その旨の通知だけを求めるのがよさそうです。
借地人に信頼関係をそこなうような行為があったとき、契約を解除できるようにしておく必要があります。たとえば、3カ月以上の地代の滞納、通知なしの増改築、承諾なしの譲渡や転貸、用地違反の土地利用などが解除の対象になるでしょう。
借地人からの一方的な中途解約の申し出も予想されます。この場合、オーナーとして申し出る時期、急な申し出の場合の違約金的なもの、保証金の返済方法といったものを明文化しておく必要があります。
また、終了期間があまり残っていないときに建物が滅失したときなどの解約条件も特約しておきたいものです。
最近の事例をみますと、「解約の申し出は1年前」それができない場合は「保証金の返還は1年後で、その間の地代を支払うこと」「解約の場合には建物をとりこわして更地で返還」といったものがあります。